残されし大地 – La Terre Abandonnée

残されし大地 – La Terre Abandonnée

遂に暖房を入れ始めました、ブリュッセル。
先週滅茶苦茶寒くて、出来る限り我慢しようぜ!などと言っていた翌日にガク〜っと気温が下がって家の中でもセーター&マフラーって何やってんだワタクシったらと思ったらもう暖房のスイッチ入れておりました。しかし、ここんとこそれほど寒さも厳しくなくて朝Seanを学校に送ったら消しております。朝は真っ暗けだし、夕方も5時頃から薄暗くなり始めるし、だんだん冬ですな・・・。
さて、そんなブリュッセルですが、昨日はそれはそれは快晴で気持ちのよい日曜日でございまして。で、ワタクシ一人でかねてから予定していた映画を観に出かけました。
「残されし大地」原題はLa Terre Abandonnée。直訳すれば見捨てられた大地となるんですが、abandonnéは諦められた、見捨てられた、という意味。でも実際にその地に住み、生活を続けている本当に一握りの住人の方々にとっては決して見捨てられてはいない、自分たちの生きてきた土地なんだ、だからどんなことがあってもここにいるということを思えば、フランス語では表現できない日本人なら分かるこの感情がこの残されしという言葉に凝縮されていると思いましたね。その意味は本編を観ると伝わってきます。
実は、この映画を撮ったGilles Laurent氏の奥様の鵜戸玲子さんとは友人でして彼女がブリュッセルにいらっしゃった頃に知り合いになりました。その後ご家族で日本へお引っ越しになってなかなか会えない状況だったんですが、今年3月のあのテロでGillesさんが地下鉄のMaelbeekで犠牲になってしまったということをテロの後しばらくしてからFacebookで玲子さんが公開してびっくりしたと・・・。Gillesさんには一度しかお会いしたことがなかったんですが、あの、はにかみ屋さんなのか恥ずかしそうに笑う優しそうな方が、まさかこんな形で命を奪われてしまうとは。しかも初めての監督作品の編集でブリュッセルに滞在している時で、彼自身どれだけ悔しい思いをされたことかと思うとご家族のお気持ちもいかばかりかと・・・。こうしてブリュッセルで晴れて公開されてGillesさんもどこかで喜んでいらっしゃるんじゃないでしょうか。
ワタクシが観に行ったのはFlageyのたった一度しかないマチネで。それ以外だと平日の夕方とか夜の上映になっちゃうので子持ちには少々厳しいのだ。9日間の期間限定の公開なのでこれを見逃すともう観られないかも、とドキドキしながら予約したものでありました。
久々のFlageyは復興コンサート以来。
お隣のCafé Belgaがまるでお祭り状態でとんでもないことになっていて、日曜日のplace Flageyってこんな風になるんだ〜と若干おののきつつFlageyへと

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ちょっと光っちゃってよく見えませんが

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こちらははオフィシャルのポスター。こちらのポスターでは「見捨てられた大地」という邦題になっております。もしかして、日本での上映に際して残されし・・・になったんではないかと。この邦題は奥様の玲子さんが考えたとのこと。
館内に入って開場を待っている間周りを観察してみると日本人はパラパラという感じ。マチネだけあって家族連れもいらしてました。でも残りはほぼベルギー人。もしかしたらGillesさんの友人のそのまた友人、とかもいらしてたりして。Flageyの映画館自体が小さいホールなのでどうだろうかと思っていたら大体7〜8割ほど埋まってました。わりと中年以上の観客がメインだったように思うんですが、やっぱりできれば若い層に是非観てもらいたいですね。ワタクシもSeanを連れてこなかったのを後悔しました。
本編は73分と中編フィルムという趣で、返ってこういうミニシアター系が合ってるなと思いましたね。
上映されるのを待つ間、人が少しずつ入ってくるのを見ながらなんだか喉の奥が詰まってくる様な感じがして、なんだかワタクシ泣きそう?などと思いましたが、会場の皆さんも静かにこれから始まる映画をじっと待っているという雰囲気を感じました。実はワタクシ、ドキュメンタリー映画と言うのを観るのはTV以外だとあのマイケル・ムーアのボウリング・フォー・コロンバイン以来でして、どう考えてもマイケル・ムーア的ではないこのGillesさんの映画を前にしてなんというか心がほっこり来るような、でも深い悲しみが押し寄せてくるような、そんな感じで観終えました。とにかく自然に対する視線がとても詩的かつ私的で、星の瞬きさえもキラキラと音を立てそうで。ナレーションなどなくても多くを語って余りあるというか、カメラワークとか演出とかそういうものを越えた素晴らしい映像だったと思います。
やはりGillesさんはサウンドエンジニアだっただけあって音が心に残りますね。風のそよぐ音、虫の音、ウグイスの鳴き声、そういったポエティックな音からふと現実に戻されるブルドーザーの音。
最後のほとんど唯一とも言える音楽、奥さん方が奏でるオカリナの合奏と歌が染みましたね・・・。
しかしですね、上映が終わって観客の皆さんは立ち上がりませんでした。日本では映画のエンドロールを最後まで観て帰る、というのは(今はどうなのか分からないが)私が日本にいた頃は結構普通だったんですが、こっちの人たちって映画の本編が終わるといきなりあ〜終わった終わったと席を立つ。しかもお掃除のオバサンも入ってきてエンドロールのクレジットを最後まで観るなんてことはまず無理な雰囲気なんですが、今回は違った。エンドロールが終わって明るくなるまで殆どの人が立たずにじっと見守っていました。皆さん、今立っちゃいけない、最後まで見届けないと、みたいな気持ちになったんだろうか・・・。
ふと、この映画をTEPCOの上層部とか政治家のセンセイ方は観たのだろうかと・・・。こういう人たちにこそ観てもらいたいし、考えてもらいたいと思ったものです。映画の中で富岡でNPOを立ち上げた松村さんがスイス(だったかと)でコンフェランスに参加されたことを唯一のご近所さんの老夫婦に報告して「政治家は一人しか来てなかったよ」って言ってたのがなんだか政治家関係の関心の度合いを象徴してて寂しいな〜と。まだたった5年しか経ってないのにもう風化しつつあるなんて(この当時はまだ5年目ではなかったとは思いますが)。
この映画をきっかけに福島のことをまた深く考えてもらえるようになって欲しいですね。‘abandonné’はダメ。きっとGillesさんもそう願ってるはず。

残されし大地 – La Terre Abandonnée

LA TERRE ABANDONNÉE de Gilles Laurent – BANDE-ANNONCE – CVB AUTEUR from CVB-VIDEP on Vimeo.

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