完璧な「PERFECT DAYS」

2023/12/21Bruxelles.Comments: 0

このところ映画館へ足を運ぶ機会が減っております、ブリュッセル。
その原因の一つにコロナっていうのはもちろんあるんだけど、やっぱりNetflixとかAmazon Primeで最新の映画が観れちゃうっていうのが一番の理由なんじゃないかと・・・。ソファに寝っ転がって、途中でおトイレに行きたくなったらポーズにだってできちゃうし、なんなら2つ観ちゃったってOKの配信映画鑑賞に慣れきっちゃってるワタクシなんざます。

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そんなワタクシ、今年のカンヌ映画祭では日本映画が2つも賞を取ったんでブリュッセルで上映された暁には是非ともシネマで観たいもんだと思っていたところ、男優賞受賞の「Perfect Days」が上映されてると言うんで観に行ってまいりました

監督はヴィム・ヴェンダース。
ワタクシ、若かりし頃からヴィム・ヴェンダースが好きで「パリ・テキサス」や「ベルリン　天使の詩」も何回観に行ったことか。その後も遡って「都会のアリス」から始まるロードムービー3部作を観たりとか、さらにヴィム・ヴェンダースを師匠と仰ぐジム・ジャームッシュにもハマったりと、とにかくあの頃はアート系ムービーを観まくってたな〜と、いや本当に懐かしい。近年はヴィム・ヴェンダース先生はドキュメンタリーが多かったように思うんだけど、今回は日本が舞台で、しかもワタクシが大好きな役所広司主演と来たらもうこれは完璧なんじゃありませんの。しかも題名はPerfet Daysと来たもんだ（笑）。

このPerfect Days、東京は浅草に住む一人の男性の日常を淡々と綴ったとても美しい映画なんですが、ヴェンダース先生が敬愛する小津安二郎へのオマージュが満載。さらに色合いもなんとなくエドワード・ホッパーの絵のような雰囲気もあってそれはそれは美しいのだ

薄暗い部屋で寝る前の読書をする主人公。
この主人公の平山（平山とは多くの小津安二郎作品で笠智衆が演じた役の名前）は渋谷区の公共トイレの清掃をしているんですが、この公共トイレっていうのがまた素敵なのだ。

これはThe Tokyo Toiletというプロジェクトで16人のデザイナーや建築家によってデザインされた渋谷区のあちこちに17箇所ある公衆トイレなんでずが（現在）、これがもう安藤忠雄から隈研吾という綺羅星のような建築家がデザインしているんである。
開始早々に現れるのがこちら

右側に飲んだくれて夜明かししたらしい兄ちゃんがいるのがなかなかリアル（笑）。
これは恵比寿の東公園というところにあるトイレだそう。地図を見てみたらこの公園のすぐ近くに恵比寿横丁っていう飲み屋街があるんで、知ってる人ならこの兄ちゃん、あそこで朝まで飲んでたな〜なんて分かるのかもしれぬ。
それにしても平山がお掃除するどのトイレも素敵で、こんな公衆トイレだったら彼らのデザインしたおトイレに入るためだけにわざわざその地まで行きたくなっちゃいますわ。サイトには地図もあるんで次回東京に行ったらぜひ一つでも行ってみたいと思っております。
さて、この映画、主人公はこのThe Tokyo Toiletの清掃員で毎朝近所の神社（お寺？）の周りを掃く竹箒の音で目を覚まし、いつも同じルーティーンで身支度をして車で出かけるんだけど、どうやら住んでいるのは浅草。必ずスカイツリーが現れて、ああ〜これはだいたいあの辺なのかな〜と想像するのも楽しい。
毎日ほとんど同じことを繰り返しているのに、何かしら小さな発見があって、それを平山と一緒に観客も体験することになるわけなんですが、淡々としてるのに全く退屈にならないのはひとえに役所さんの演技力とヴェンダース先生の画像の美しさゆえ。そんな淡々とした毎日もとあることで少しだけ波風が立つものの、それでもやっぱりそれはそれなりに淡々と過ぎていくのが愛おしい。
出演者も少ない出番だけど三浦友和とかまさかの石川さゆり（小料理屋のママで歌も披露しちゃってまんまの石川さゆり）、ホームレス役で田中泯が不思議な存在感出しておりました。しかしやっぱりこの映画は役所さんが出ずっぱりで、彼ありきの映画という感じざんすね

いい顔してるね〜。
そんな映画の中で、さすがヴェンダース先生、庶民の生活を良くリサーチしたね〜と思ったのがコレ

平山が毎日使ってるお布団。
これは恐らくニトリの一番安いタイプのお布団セットなんじゃないかと。なんで分かるのかって言うと、実はワタクシ父が亡くなったときに実家に置いてあるお布団がないと聞いて（実際到着してみたらちゃんとあったんだけど）こりゃマズいわとブリュッセルを出発する直前にニトリのネットでポチっとしたやつでして、このセットと全く同じネイビーのなんですわ。多分これ見てワタクシのように「あっこれニトリのアレだ！」と分かっちゃう人結構いるんじゃないかな〜と一人でうふふとなっていたワタクシざんす。
そんなヴェンダース先生のPerfect Days、これもまたワタクシの何度でも観たいヴィム・ヴェンダース作品になりそうです。